facethemusic (過去ログ)

20040421-20070301。音楽問題を中心に記載したはてなダイアリー、【facethemusic】の移行、その記録。

"YouTube社に著作権侵害行為の事前防止策を要請"行為は、近い将来の"日本からのYouTubeアクセス禁止"を招きかねない

その後も多数の映像作品が違法にアップロードされていることから、関係権利者は、意見交換会を開催(11月17日)し、今後の対応を検討した結果、YouTube社に対し著作権侵害行為を未然に防ぐ 具体策の実施を要請することとし、12月4日付で書面を送付しました。

 要請文の骨子は、(1)デジタルミレニアム著作権法DMCA)による削除手続き「Notice & Take Down」が大量の違法アップロードによりうまく機能していないこと(2)従って、YouTube社において、技術的手段や工夫により著作権侵害行為を排除するシステムを実現することを要請するものであり、併せて暫定的な対策として3項目を要請しています。

(社団法人日本音楽著作権協会 JASRAC 12月5日付 プレスリリース『YouTube社に著作権侵害行為の事前防止策を要請』)より一部抜粋)
YouTubeの3万ファイルの削除にとどまらず、権利者団体は次の一手を出してきました。
YouTube社への書面を読むと、

貴社がYouTubeサイトにおける著作権侵害行為を予防する措置を講じるまでの間、私たちは貴社に対し、投稿者本人が著作権を有せず、権利者の許諾も得ないまま映像作品を違法にアップロードすることを排除するため、具体的に以下に例示するような暫定的な対策をとるよう要請します。

1. YouTubeサイトのトップページに、「投稿者本人が著作権を有せず、権利者の許諾も得ないまま映像作品を投稿またはアップロードする行為は違法であり、民事・刑事上の責任を問われる場合があること」を日本語で掲示すること。※日本語表記については必要な協力を行う用意がある。
2. 今後アップロードを行うユーザーに対しては、氏名・住所などを登録させ、その情報を保持すること。
3. 私たちの求めに応じ貴社が本年6月以降に削除した映像作品をアップロードしたユーザーが以後投稿できないように、ユーザーアカウントを無効とすること。

(以上抜粋)
となっております。
2の個人情報に関して、民事・形而上の責任を問われるのはYouTubeではなくアップロードしたユーザー、問うのは権利者団体という構図です。となると登録された個人情報は権利者団体が使用することになるのですが、これはYouTubeの個人情報管理への越権行為では、と勘繰ってしまいます。
3においては、必ずしも、"本年6月以降に削除"されたユーザーの全てが再度違法アップロードを行っているとは限らないわけであり、行っていない(違法分が消された後、合法的なアップロードのみを行った)ユーザーについても投稿不可の状態に置くのは、ユーザーへの侵害行為とみなしてよいでしょう。
(それらユーザーが以前行った行為が、権利者団体の"著作権啓蒙の不備"に因って起きたことも考えられます。それらを考慮に入れずに3を要求することは、権利者団体が自らの啓蒙不備を認めず、あたかもユーザーすべてをハナから悪と決め付けている、というように捉えてしまいかねません)

そして、上記1〜3以前の問題として。
YouTube社で、アップロードされた全てのファイルの中で"日本の権利者団体に著作権があるファイルはどれか"を判別するなど不可能に近いのではないかと思うのです。日本語で話していることの判別も難しいだろう状況において…。素人目にも不可能なのは明らかでしょう。
(仮に日本語の分かるスタッフがいたとせよ、日本の権利者団体が5日間で約3万ファイルを削減させたことを考慮すれば、また増加するファイルにも対応できるようにするならば、莫大な労力と人数の確保が必要であり、ビジネス面においても採算が取れないでしょう)
となれば、上記の考えを日本の権利者団体は当初から念頭に置き、YouTube内での管理が不可能ならば、最終的に日本からのアップロードを、もしくはアクセスすら禁止させるという措置を採るのでは、と考えてもおかしくありません。かつてニュースにて、YouTubeの日本からのアクセス禁止を真剣に検討すべきとの意見が出ていたことがあり、それすらやりかねないのではという思いに駆られてしまいます。


私見を述べるならば。
なにも、著作権を無視したアップロードを私は歓迎しているわけではありません。
違法が続くのには、ユーザーが"違法性を知らずして"か"違法性を知ってて敢えて"のどちらかの理由があり、前者の状態があるならば、著作権の啓蒙に努めるはずの権利者団体の啓蒙不備が原因していると考え、その啓蒙の努力に努めることが最優先でありその努力を怠った段階でYouTubeへこのような文書を出すのは、権利者団体が努力を怠った証拠であるということです。前者のユーザーなんていないという考えであれば、権利者団体はユーザーを全て悪の存在として考えているといってもよいでしょう。そして、それ以前に著作権自体が旧態依然のものでありそれ自体をアップロードさせることが先決ではないかと思うのです(アメリカでYouTubeが企業や番組、音楽のマーケティングに効果的という最近の報道から、YouTubeは企業にも有益になりうるわけで、日本でそれが出来ないのは現行著作権に因る部分が大きいのではないでしょうか。一方で日本でYouTubeの人気がある以上同様のサービスが出てもおかしくないのに、出ないかもしくはYouTube並の人気が出ないのはやはり現行著作権がそれらの出現を邪魔しているわけです)。
つまり、どの点においても、先ずは著作権の、そして権利者団体の改善が第一にあり、それをしてはじめて他者への物言いが可能となるのではと思うのです。その上で日本の権利者団体は自分に甘く他人に異常に厳しいと考えます(だからこそJASRACへの批判も強いはずです)。
その意味で、著作権も権利者団体も一刻も早い改善を求めているのですが、その動きが全くと言って見られないのであれば、外部からの改革、再構築を真剣に検討しなければならないと考えます。YouTubeへの日本からのアクセス禁止、という悪夢が現実味を帯びてきた以上、尚更です。