日本レコード協会は"再販制度を検討する意思がない"
社団法人日本レコード協会の発行する『THE RECORD 2007年1月号』において、会長である佐藤修氏が"新年のご挨拶"の中で、再販制度に触れています。
以下、内容を抜粋します。
新年のご挨拶
レコード産業の新時代に向けて(中略)
また、音楽CDの再販制度は我が国の優れた文化政策であり、その役割と重要性について、広く国民の皆さまから理解が深まるよう取り組んでまいります。
我々はレコード製作者を代表する団体として、またレコード製作者の権利を管理する団体として、レコード産業の将来に向けた環境整備と音楽文化の発展に向け、一層の努力を重ねてまいる所存です。
再販制度、こと音楽ソフトに関する同制度においては、2004年の著作権法改正問題にて、いわゆる輸入権と再販制度の二重保護が指摘されるなど、以前から問題が指摘されていますが、同じ新年のご挨拶で"CDの売上は依然厳しい状況が続いている"と、音楽業界の問題を認識している者が一向に再販制度だけはあたかも神聖化しているのは納得しかねます。未だ問題にメスを入れないのには何か理由があるのでは、と勘繰ってしまいたくもなるのですが、いかがでしょうか。
Wikipediaでは『2006年には政府・知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会は音楽ソフトの再販制度廃止を公正取引委員会に勧告する方針を打ち出した』と記載されてもおり、政府機関までメスを入れようとしているものを頑なに拒否しているとさえ思います。
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遅ればせながら、本年もよろしくお願い申し上げます。
オリコンの常識を疑う - オリコン社長の"報道への真意"
弊社の真意は、烏賀陽氏が「事実誤認に基づく弊社への誹謗中傷」があったことを認め、その部分についてのみ謝罪をしていただきたいというものです。
ただ、我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。上記のとおり、烏賀陽氏に「明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷」があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます。
(いずれも記事より引用)
あくまで個人的な考えですが。
オリコンのこの掲載は、相手を追い詰める(謝罪へ導く)"心理的作戦"であり、"絶妙なタイミング"と考えています。
①謝罪誘導への囲い込みが周到になされている
謝罪を求めるならば提訴に踏み切る以前に、どんな形であれ本人と話し合うのが筋というもの。その手順を無視したやり方は異様です(そしてそれこそが多くの人にオリコンへの不信感を与えているでしょう)。
しかもその提訴が"個人に対して"、"高額の"、そして"19人という異常なほどの弁護団を用いて"行われる…太字部分は圧力そのものでしょう。一個人を完膚なきまでに叩きのめすという気持ち悪さすら覚えます。相手へ包囲網を敷いて追い詰め、圧力でダメージを与えたところで、"謝罪すれば提訴を取り下げる"というコメントは、一瞬オリコンが隙を見せたように見えますが、謝罪してもしなくても、二択どちらを選んでもオリコンの勝ちにつながるわけです。
(謝罪しない場合は裁判になりますが、そこで被告が必ずしも負けるとは限りません。ただし、提訴となった段階で、当事者(レコード店やレコード会社社員等)がオリコンの意図的な操作について語る範囲は確実に狭められます。よって、被告のコメントが正しいと立証することは厳しい、と思うのです。)
②このタイミングでの掲載で、報道を知らない大勢の人間を味方につけることができる
本日、年間チャートが発表されました。
この記事により、売上枚数等を求めに、オリコンHPを閲覧する方は飛躍的に増えるでしょう。そしてその閲覧者の中には今回の事件を知らない人が極めて多くいるはずです。オリコンは、事件の発端が1年も前の記事なのに今になって提訴するに至ったのは、この閲覧者上昇のタイミングで"オリコンは間違ってない"ということを、より多くの閲覧者に心理的に植えつけたい、そしてより多くの味方をつけて相手を追い詰めよう、としているのではないのでしょうか。
他方で、前回のプレスリリース、そして今回の社長のコメント双方に、事件の詳細を記した報道(そのリンクを含めて)が一切記載されていません。オリコンは記事の掲載/リンクを全く行わないことにより、閲覧者に事件への客観的な視野を与えさせず、オリコンの主観のみを与えることで、閲覧者への心理的刷り込みを行おうとしているように思うのです。
社長のコメントに、閲覧者の心理に訴える一文が掲載されています。
どんな企業も、主力商品を事実誤認に基づき誹謗中傷されれば、防衛に立ち上がるのではないでしょうか。言い方を換えれば、それは義務であるとさえ言えます。
個人にとっても同じです。自分にとって一番大切なものが、事実誤認に基づき攻撃されるならば、防衛せざるを得ないのではないですか?
その防御や義務は、圧力や言論封殺という手段でなければ果たせないのですか。
防御は圧力とイコールなのですか。
オリコンの"常識"を疑います。
権利者団体のYouTubeへの要望 YouTubeの回答に対する権利者団体のコメント
オリコン"言論封殺"問題 オリコンのプレスリリースへの津田氏の見解
音楽配信メモの津田大介氏が、今回のオリコン訴訟問題における本日付のオリコンのプレスリリースに関し、冷静な分析及び疑問点を洗い出しています。
オリコン"言論封殺"問題 オリコンの言い分
本日12時付でオリコンにて、今回の問題の詳細をアップしています。
以下、全文引用。
事実誤認に基づく弊社への名誉毀損について
本日、一部報道にありました「ライター烏賀陽弘道氏への提訴」について弊社の見解を述べさせていただきます。直接的な原因は、烏賀陽氏の(株)インフォバーン発行の「サイゾー」4月号における明らかな事実誤認に基づく以下の2つの発言にあります。また、烏賀陽氏は、長年に亘り、明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けたことが背景にあります。①「オリコンは調査方法をほとんど明らかにしていない」(烏賀陽氏発言)
弊社は、調査方法について昭和43年のランキング開始時以来明示しています。またその調査店についても平成15年7月以降、弊社のWEBサイト、雑誌等のメディアにおいて開示しています(3,020店)。さらに、調査方法については、他社メディアの取材にも応じています。
②「オリコンは予約枚数をもカウントに入れている」(烏賀陽氏発言)
昭和43年のランキングの開始時から今まで予約枚数をカウントしたことはありません。
以上2つの発言につきまして、明らかな事実誤認に基づき弊社の名誉を毀損していることに対して提訴しています。
申し上げるまでもなく、弊社が発表するランキングは、弊社事業の中核を担うものであり、明らかな事実誤認に基づいた報道によって、その信用性が低いとの印象が社会的に浸透するならば、弊社の事業に多大な影響を与えることにもなりかねません。烏賀陽氏は、弊社からの平成18年6月23日付け内容証明郵便の中での「サイゾーの記事のとおり発言ないし指摘をされているのでしょうか」という問いに対し、平成18年6月30日付けのFAXにて「自分が電話でサイゾー編集者の質問に答え、編集者が発言を文章にまとめました。まとめたコメントはメールで自分に打ち返され、修正・編集を加え、若干の意見交換ののち掲載の形にまとめられました」(同氏からのFAX原文)と回答してきています。このように、烏賀陽氏は、発言は自分が責任をもって行ったものと明言されています。
烏賀陽氏は、同様の発言を他のメディアでも行っており、同氏の発言の社会的影響力は決して小さいものではありません。
社会的信用とは長年の不断の努力によって成されるものと確信しています。ジャーナリズムの名の下に、基本的な事実確認も行わず、弊社の長年の努力によって蓄積された信用・名誉が傷つけ、損なわれることを看過することはできないことからやむを得ず提訴に及んだ次第です。
この度の提訴はあくまで烏賀陽氏によって毀損された弊社の名誉を回復するための措置であることをご理解ください。
①、②については裁判の問題上詳細を述べていないのかもしれませんが、その具体的な方法を述べた上で反論するのが通常、もしくは常識的な経緯であり、反論もせぬままにいきなり訴えるという手段はあまりに大人気なく、その手段の幼稚さ自体がオリコンの正当性を欠く(自らの首を絞める)ことに気づかないのでしょうか。
そして、それ以前に、『本日、一部報道にありました「ライター烏賀陽弘道氏への提訴」について弊社の見解を述べさせていただきます』(一部引用)とありますが、報道のソースを(どれかひとつでも)明らかにしないのはおかしいでしょう。客観的な報道をリンクすることで、閲覧者の客観的な判断を仰がせることをせず、自分達の意見のみを通そうとする姿勢には憤りすら覚えます。
今回の裁判での烏賀陽氏の肉体的・精神的疲労は察するにあまりあります。18人の弁護団(訴状は下記リンクにて掲載されています)にて包囲するやり方はまさに"言論封殺"そのものです。訴状内容の問題もありますが、それ以前に、訴訟やそれに至るまでの経緯におけるオリコンの非人間的な姿勢を許すわけにはいきません。
●参照