facethemusic (過去ログ)

20040421-20070301。音楽問題を中心に記載したはてなダイアリー、【facethemusic】の移行、その記録。

銀河鉄道の夜を"尊敬する"中島みゆき、"尊敬の念"に疑問を抱く松本零士 両氏の発言

2007年1月号の表紙モデル、中島みゆき氏が持っている本。宮沢賢治銀河鉄道の夜』について。

宮沢賢治による短篇童話。大正末期に執筆が始まり、昭和初期にかけ、推敲が繰り返されたが、完成には至らなかった。主人公の少年ジョバンニが夜空を渡る銀河鉄道に乗り、白鳥停車場など幻想的な世界を旅する内容。親友カムパネルラとの別れなど、無常や儚さにも通じる、作者の死生観も著されている。
「2004年に初演し、06年に再演した夜会『24時着0時発』(再演時は『24時着00時発』)の土台になった物語ですから。私にとっての『銀河鉄道の夜』を、宮沢さんにお手紙申し上げたのがあの芝居というか。かっこつけて言うなら、“宮沢賢治に捧ぐ”ってところですかね」。『24時着00時発』は、原作にはない鮭が大きな役割を果たす。

(WEBダ・ヴィンチより抜粋)
インタビューを読んでいないため言及は避けますが(おそらくインタヴューからの一部要約ではないでしょうか)、『銀河鉄道の夜』をモチーフにした物語の執筆に関して、同著への尊敬の思いが伝わってきます。


その一方で、盗作問題で渦中の松本零士氏の発言。
2004年9月17日の著作権フォーラムでの内容です。
(記事を教えてくださったTontonさんに感謝申し上げます)

孫子の世界まで自分の著作物を守りたいというのが心情だ」と述べ、そのためにも現行著作権法では「作者の死後50年」となっている保護期間を「本音は死後120年ぐらいにいっぺんに延ばしてくれればいいが、そんな無茶は言えないので、まずは速やかに死後75年に延ばして欲しい」と主張した。

また松本氏は、「自分が描いたマンガの中で自分が苦労して編み出した言葉、いわば『創作造語』とでも言うべきものが簡単に盗用されてしまう」「というより、現在はそれの盗用を著作権法上防止する規制がないの江、盗用という意識すらない」と語った上で「このような『創作造語』についても早急に著作権で保護するような制度を整備して欲しい」とも主張していた。

(以上、記事より抜粋)
松本氏の『銀河鉄道999』は『銀河鉄道の夜』に少なからず刺激を受けて創作されたのではないのでしょうか。それを、まるで自らが編み出した"創作造語"として、土台である『銀河鉄道の夜』を踏まえずにあたかも我が物扱いとしているのは、(失礼を承知で書きますが)厚顔無恥と言わざるを得ません。
発言を行ったのが著作権啓蒙という意義の内容においてゆえにこのような"権利者として著作権を守るべき"という意味合いをより強くしたのかもしれませんが、少なくとも上記の発言には、創作の土台となった『銀河鉄道の夜』を、宮沢賢治氏を尊敬している、という思いは感じられません(尊敬の念があれば、"創作造語"などという言葉は用いないでしょう)。
(おそらくはこのような松本氏の意識、概念が"槇原氏を盗作として声高に叫んだ"事件につながっているのでしょう)
尊敬の念を感じさせてくれない松本氏。作家として以前の問題として、失礼ではないでしょうか。

ちなみに記事には松本氏の他の発言や一部権利者の発言でも、"破壊的行為"などという過度な発言がみられます。客観的な状況分析、冷静な態度が見られない"著作権の保護期間を延長せよ"という意見は納得がいきません。国民会議のディスカッションにおいて、賛成・反対の意見を聞き、冷静且つ客観的に、そして広い視野で考えているのはどちらの立場の方か、を見極めることも重要でしょう。