facethemusic (過去ログ)

20040421-20070301。音楽問題を中心に記載したはてなダイアリー、【facethemusic】の移行、その記録。

審議関連→検証が必要な問題列記

文化庁の見解:著しい不利益の有無を『著作隣接権料と著作権料を合算した金額で判断』の大弊害
高橋健太郎氏が、owner's log by Kentaro Takahashi「久しぶりに」にて、上記問題を解説しています。尚、高橋氏は、以前からこのサイトで取り上げた「笹山登生氏の掲示板」にて、文化庁とコンタクトを取っています。与党側委員会理事が最後まで面会を許してくれなかったのも確かに問題ですが、絶対的に正しいやり方では「変えられない」政治や音楽業界に問題があるのではないでしょうか。何が正しいかなんて、言い方は悪いけど幼稚園児でも分かるのです。大人にはオトナのやり方がある、という考え(政治へのアプローチとして推奨された活動内容はその典型、と思います)は屁理屈でしかありません。もっとも、その屁理屈に因る会社・学校その他組織内におけるジレンマは誰しもが感じており、正論が勝ることはそう高くはないのですが(と思っている自分自身に嫌悪感)。
それにしても、著しい不利益の有無を『著作隣接権料と著作権料を合算した金額で判断』とする文化庁の考えは、高橋氏のコメントを読むにつけ、腹立たしさを覚えます。
国会提出資料(謎工氏が高橋氏に提供された資料はこちらより→(PDFファイル)国会に提出された欧米と日本のライセンス料の比較データ資料))についても、卸価格(PPD)をもとにするのが大前提なのに、日本以外は税込の販売価格から計算されている、というとんでもない代物で、ここからも文化庁数値の酷さが表れています。何気に思うのですがこういった数値の嘘がかなり出てきているのですが、虚偽として刑事告発できないのか、と(大袈裟かもしれませんが、これら虚偽で法案が成立する方が、国民への詐欺である、と言えよう)思うのです。
そして更に、

という具合に、またしてもデータ自体が非常に根拠の怪しいものだったのだが、何よりも大問題なのは、そこでいうライセンス料というのが原盤印税と著作権印税の合算であったことだ。国会での答弁でも、「著しい不利益」があるかないかはそれらを合算した金額で判断する、と言ったので、僕は椅子から転がり落ちそうになった。
著作隣接権者であるレコード会社が受け取るライセンス印税は大きい。ここではPPDの25%としよう。それに対して、著作権印税はずっと小さい。自分で作詩作曲するアーティストの場合でもその著作権印税はPPDの8.5%くらい。実演家印税については25%の原盤ライセンス印税の中から2%をもらうぐらいだろう。日本のレコード会社の一般的な契約の場合。
「著しい不利益」があるかないかをこうした著作隣接権料と著作権料を合算した金額によってのみ判断するということは、輸入権の行使にあたって、レコード会社の利益、不利益が最優先されることに繋がる。

例えば、こういう例を考えてみよう。
台湾にAというアーティストがいて、台湾のレコード会社からライセンスされたAの作品の日本国内盤が出た。台湾および日本のレコード会社は当然、輸入権を行使して、安い台湾盤の輸入をとめたい。しかし、Aにとっては、実演家印税は台湾盤では2%であるのに対して、日本盤では1%だった。この場合、台湾盤と日本盤の4割近い価格差があっても、Aが受け取る実演家印税は台湾盤の方が大きい。さらに台湾ではAのマネージメントに2%のプロモーション印税も設けられていたので、著作権著作隣接権以外の部分でも台湾盤から得る利益の方がずっと大きかった。
しかも、日本のレコード会社は日本発売するにあたって、ジャケットを変更した。アーティストであるAはオリジナルのジャケットの方を好んでいた。そこで、Aはレコード会社の輸入権行使に異を唱えた。

しかし、日本の税関当局は「著しい不利益」があるかないかを原盤印税と著作権印税を合算した金額によってのみ判断する。著作権者の中に、輸入禁止になると不利益を受ける者がある者がいたとしても、圧倒的に大きい原盤印税の大小による判断が優先されてしまう。Aの声は封殺されるだろう。これでは、すべての著作権者、著作隣接権者に権利を与えたと言っても、実質的に著作隣接権者であるレコード会社にしか権利を与えなかったに等しい。
ならば、小倉弁護士の意見にあったように、最初から著作隣接権者にのみ、権利を与えれば良かったのだ。そのように条文を変更すれば、洋楽の並行輸入に影響が出ることをかなり程度、防ぐことができたと小倉弁護士は以下に書いている。
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2004/03/_the.html
つまり、著作権者にも権利を与えると言って、洋楽の並行輸入盤も輸入禁止できる法律を作り、しかし、実際には著作権者には権利が与えられず、著作隣接権者にのみ、権利を与える運用をするというわけだ。アーティスト軽視、レコード会社のみを優遇する文化庁の姿勢がここにも表れている。

最早、アーティストが作り上げた、その命たる音楽は、その権利を著作隣接権者であるレコード会社に渡した段階で全て権利を搾取、剥奪されてしまう、と言っても過言ではないのかもしれません。
無論そこでの悪用が更には輸入盤規制や、悪しきCCCDによって消費者にも不利益を被る構造(それも意図的に)を作り上げてしまうのです。レコード会社による牛耳りがアーティストのCCCDも輸入盤の禁止も消費者の犯罪者説も、その全てを正論にしてしまおうとしている、と言ってなんら差し支えない、と考えます。
音楽ファンの誰もは本当は自由に音楽を聴きたいという気持ちが第一です。CDの売上が下がってきているといっても、じゃあライブ動因が下がるか?というと一概にそうではないはずですし、夏フェスの盛り上がりや新たなフェスの誕生からすれば、もっと音楽を楽しむ動きが出てきているのは自明でしょう。今の法改正はその自由まで搾取してしまう、悪い予感がします。

●6/1「衆議院文部科学委員会参考人:日本レコード協会依田会長の発言について
発言録に関しては、はてなダイアリー - 源にふれろ「We never forget what he said」にて依田会長の発言が書き起こしされております(サイト管理人のlaazさん、ありがとうございます)。
こちらもかなり検証が必要な問題です。以前もその発言直後に自分も問題提起をしたのですが、同問題をはてなダイアリー - 創原の森「会議録は語る」にて取り上げられております(以下抜粋)。

昨年1月から11月までに日本レコード協会会員レコード会社が発売した邦楽アルバム4445タイトルの価格を分析いたしますと、2500円未満の価格のものが41.5%と最も多く、平均価格も2315円であります。 依田氏の冒頭の意見陳述より

 Amazon.co.jpで現在発売中のJ-POPの一覧をざっと見ても2500円以下のアルバムを見つけるほうが大変です。半分近いアイテム数とのことですから、もっと頻繁に目にしてもいいはずです。これはどうもシングルの数も含まれているような…?

問題は上記の他、売れているアルバム(要は「還流盤」が日本の売れ筋の作品中心に現地作成されるわけです)に絞った上での価格帯のパーセンテージ調査、というのもあると考えています。しかしながら、自分も上記問題はシングルを入れての結果の平均価格だと思うのです。まずは、依田氏の一連の発言内容が、きちんとした再調査の結果、真実であったかを知る必要があると考えます。全く信じていない、というのではないものの、一連の文化庁調査内容の不適切さを考えれば再調査が必要なのは自明でしょう(こういった数値の調査は、7月号P22で5/25迄の法改正内容を記事にまとめた雑誌、日経エンタテインメント!に協力を依頼して確認するという手もあるでしょう。ただし、当然ながら日経エンタ!の承諾が必要ですが)。