facethemusic (過去ログ)

20040421-20070301。音楽問題を中心に記載したはてなダイアリー、【facethemusic】の移行、その記録。

iTMS対応で問われるレーベルの姿勢

株式会社ドリーミュージックは21日、iTunes Music Store(iTMS)への楽曲提供を開始した。同社の所属アーティストである平原綾香、森山良子、bonobosらの曲を配信している。

(以上、記事より一部抜粋。はてなの杖日記9/22付『ドリーミュージック、iTMSへ楽曲提供を開始』経由)
平原綾香さんのシングルが200円、また柴田淳さんは9/21にベスト盤をリリースしたばかりにも関わらず未配信、ということで何か消極的な感は否めません。レコード会社の方針を伺ってみたいところです。

さて、このようなニュースが掲載されています。

以下、記事より一部抜粋。

人気のデジタル音楽プレーヤーiPodの仕掛け人、Appleスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)は、デジタル楽曲ダウンロードの価格を引き上げようと考えている音楽業界を「強欲」と表し、そのような動きがユーザーを再び海賊行為に走らせるだろうと警鐘を鳴らした。

 レコード会社各社はAppleとの新たな契約交渉を前に、iTunesストアで販売される楽曲の価格設定(米国では1曲99セント、英国では79ペンス)を見直し始めた。

 「もしも彼らが価格を引き上げたいのなら、それは彼らが強欲になっていることを意味する」とジョブズ氏はパリで9月20日に行われた記者会見では語った。

 「価格が上がったら、消費者は再び海賊行為に走り、皆が損をするだろう」と同氏は付け加えた。

そして各レコード会社のスタンスも記載されています。

Universal Musicで最大のInterscope Record部門のジミー・イオビン会長は先月、オンラインで音楽を購入している消費者の数は、値上げを十分に正当化できるほどではないと語っていた。

 「まだ(値上げの)時期ではないと思う」と同氏はNew York Timesに語った。「もっと多くの人を、オンラインで音楽を買うという習慣に転向させる必要がある。そうするための手段は値上げではないと思う」

 一方で、Sony BMGのアンドリュー・ラックCEOは先にReutersのイベントで、AppleiPodと楽曲ダウンロードの売上という2つの収入源から恩恵を受けているが、音楽業界には1つの収入源しかないと指摘した。

 「まったくもうかっていない。わたしには収入経路が1つある。肛門科医に見せたら分析しにくいであろう経路だ。きれいなものではない」(ラック氏)

ここでもレコード会社のスタンスの違いを浮き彫りにしています。以前ココでも書きましたが、SONY BMGの考えは(直接的に言及しているものではないにせよ)値上げ推進の様子です。しかしその収入源の例えは実に汚いものではありませんか。
よくよく考えればソニーはアップル同様、携帯オーディオプレイヤーを販売し、(グループ全体として)2つの収入源があるはずなのです。しかもiTunesに準拠しないセキュアCDをリリースし、ある種のソニー系プレイヤーへの囲い込みを図ろうとしているのではないのですか。にも関わらずアップルを牽制する資格などないはずなのです。
しかも、仮に収入経路が1つしかないとしても、その1つの経路は無数に枝分かれしています。とりわけデジタルになれば"廃盤"というものはなくなり、沢山の名盤が復刻・自由に購入可能となるのです。例えば、HEATWAVE山口洋氏は日記の中で以下のように記載しております。

事のいきさつはともかく。ソニーの法務ってとこに行った。前に世話になっていた事務所の社長氏、音楽出版社の社長氏、そしてうちのチビと共に。ヒートウェイヴは90年あたりから約5年間、エピック・ソニーとの契約の元、アルバムを5枚発表した。しかし、我々のアルバムは廃盤の憂き目に遭っていた。その権利はレコード会社が保有している。我々の手が全く及ばないところにある。新しくファンになった人々が昔の音源を聴きたいと思っても、それを聴くことが(一部を除いて)叶わない状況にある。けれど時代は変わった。配信によって、それを耳にする事が出来る。レコード会社も大きな出費やリスクを負うことなく(サーバーのハードディスクの容量とある程度の人件費を除いて)、言わば「過去の遺産」によって、収入を得ることができる。もちろん我々も。ならば、それを残さず公開して欲しい。あるいはitunes music storeに門戸を開いて欲しい(今現在ソニーはそこに参加していない)。それに関しては、リリースした時と違って、制作上のコストのかかり方が全く異なる訳だから、新たに違う条件で契約を結んで欲しい。そんな申し入れをしに行った。

(以上、一部抜粋。ミュージックマシーン 9/17付経由)
一部経費の出費だけで、沢山の過去の音源を配信可能となり、その恩恵はアーティストも、ファンも、そしてレコード会社も被ることが出来るのです。『音楽配信を使えば、この世から「廃盤」をなくすことができるんだもんね』というミュージックマシーンの管理人、タクヤさんの言葉は、音楽好き全員の思いではないでしょうか。

音楽配信への以降によりビジネスモデルの急激な変革が求められているのは誰の目にも明らかです。しかしスティーブ・ジョブズ氏が牽制した某レコード会社の方針は、音楽配信のビジネスモデルをハナから諦めている、と言わざるを得ません。音楽を、音楽の楽しみを売って商売しているという意義を常に抱いていただきたいものです。