facethemusic (過去ログ)

20040421-20070301。音楽問題を中心に記載したはてなダイアリー、【facethemusic】の移行、その記録。

ITmedia LifeStyle 最終回:輸入音楽CDは買えなくなるのか?『日本のCD価格は安くなる?――法改正がもたらすエンドユーザー利益の真偽』

今回が最終回です。自分の過去のブログでも書きましたが、このページの最終頁にこれまでの連載内容と関連記事のリンクがありますので是非参照してください。

で、気になった箇所を挙げてみます。

(以下は一部抜粋)

ただ、そもそも日本のレコード業界は日本のレコードが高過ぎると考えているのだろうか?先の参議院文教科学委員会の4月15日の質疑で、レコ協の依田巽会長はこうした指摘について、次のように答えている。

 「わが国のレコードについては、価格の多様化、低価格化が進んでおり、昨年1月から11月までに日本レコード協会会員レコード会社が発売した邦楽アルバム4445タイトルの価格を分析しますと、2500円未満の価格のものが41.5%と最も多く、平均価格も2315円、税込みで2430円となっております。(中略)したがいまして、大体平均2500円未満の価格のものが41%の市場でシェアを持っておるということでございます」

「これを先進国の中で比較した場合、日本はイギリス、フランスとほぼ同水準でありまして、アメリカは日本より2割ないし3割程度安いという認識はしております。しかし、レコードは、収録された音楽、すなわち音だけではなくパッケージ、すなわち装丁を含めて一つの芸術商品であります。日本の国民は欧米に比べて豪華な仕様を好む国民性があります。」

(中略)

「価格のほか、収録曲の数の増加や、CDとDVD複合商品の発売など、消費者ニーズに応じた様々な還元策を実施してまいります。最近では、CDとDVDが一体になった作品を従来の価格とほぼ変わらない価格で販売しているという事実が市場では非常に多くなっております。これもすべて消費者還元あるいは競争力の観点から基づく、市場原理に基づく価格戦略であります」(依田会長)。

(中略)

試みにTSUTAYA Onlineの邦楽アルバムベスト10(2004年5月9日-15日)にランクインしているアルバム10枚の平均単価を算出してみたところ、税込み2927.8円。2500円以下のアルバムは1枚だけだった。なお、10枚のうち、hitomi「TRAVELER」と大塚愛「LOVE PUNCH 」には初回限定版やDVD付きがあり、こちらは3800円。また、尾崎豊「13/71-THE BEST SELECTION」にもDVD付きがあり、3300円。これらは通常盤がいずれも3059円なのでそちらで計算したが、付加価値を付ける場合、それなりの価格が上乗せになっていることが分かる。

しかし、現状を見る限り、少なくとも売れ筋邦楽CDについて「価格を下げる」という選択肢をレーベル側は取っていない。むしろいろいろなオマケを付け、単価を上げるという方向で動いている。となれば、法改正によって日本のレコード会社がアジアに進出すれば、日本の邦楽CDの価格が下がるというロジックは、素直に信じることはできないものだろう。


果たして依田会長が示した、邦楽アルバムの市場全体のシェアのうち41%が2500円未満なのかというと疑問が残ります。2500円未満が「ミニアルバム」という可能性もあります(ミニ、である以上必然的に価格は下がります)。その上、これが4445"タイトル"を基準としていることも問題です。上記のTSUTAYAの例では売上上位タイトルのうち9タイトルも2500円以上であり、またそもそも還流盤CDは、国内で売上チャート上位に入るような作品が主に販売されているわけです。となると、還流盤規制と謳っているのであれば、"タイトル"での基準ではなく、価格帯に対する"売上枚数"でのシェア、を基準にしないといけないのではないか、と思います。

そして、DVDを付帯してそもそも価格を上昇させていることも問題で、価格を下げる、という依田会長が発言した選択肢がほとんど市場において見られないということも問題です。