facethemusic (過去ログ)

20040421-20070301。音楽問題を中心に記載したはてなダイアリー、【facethemusic】の移行、その記録。

5/15 いぶき主催『唄の湯』@西荻窪w.jaz

"あずましぃ湯っこ"だった唄の湯。いぶきのやす君と同郷の自分が一言で今回のライヴを伝えるならばこの言葉がピッタリじゃないかな、というくらいあずましぃ=気持ちいい(津軽弁です)、湯上り最高な唄の湯でした。
会場は最近アコギのライヴハウスで定番となりつつある西荻窪w.jaz。居心地、雰囲気、人柄の優しさ等素晴らしく、ついつい通ってしまいます。今回は会場入口に暖簾がかかり、スタッフのたーさんが番頭で半被を来ている(いぶきの大樹君が持ってきたもので祖父の代から受け継がれたもの。80年くらい?受け継がれた逸品。洒落てます)等、細かな設定も楽しく、ライヴ前の会場を一段と暖めてました。そんな雰囲気の中ライヴは19時開演。それでは今回のライヴを順を追って。


①神山貴満
オープニングアクトで登場。当日になって発表された?らしく、入口の看板に名前が載ってるのを見忘れた自分(ごめんなさい)。
極度の緊張を私へのイジリで交わしつつ(笑 実際、この日はなぜか自分がフィーチャーされてしまいましたが)、3曲を披露。堂に入ったステージでした。ギターが安定してきたことで歌うことに専念できてきたからか、声の説得力、表現力が増してきて歌に力が付いたなと実感。初聴きの「オアシス」(以前に披露してたらごめんなさい)を冒頭に据えたことも、新曲への自信の表れじゃないかな、と思ったり。親友のいぶきや兄貴分の冬樹さん等に囲まれていい自信に繋がってるな、と好印象でした。早くも「ただ ただ」「もち」が名刺代わりの2曲になってて頼もしい限りです。


②ART (w/古賀久士(piano))
5/17のココ☆ロック(ART君主催)以来のステージ。手厳しい事を敢えて言えば、前回のライヴは声が本調子でなく、回復したのか気になってたのです。しかもこの日は久しぶりにピアノサポートのみならず自身がギターを弾く(ひさびさにライヴで披露)こととなり、その不安を口にしていてちょっとだけ心配してたのですが。
心配は杞憂でした。
ライヴは最初と最後にギター弾き語りを持ってくる構成。これだけでもギターへの自信を感じさせるのに充分でしたが、特に最後の「ask.」でのヴォーカルとの絡みは絶品。彼の場合、感情を内でギリギリまで高め爆発しそうな感じの声(その不器用さは彼が目指すところの古明地洋哉さんに似てる気も)に特色があり、一方で「ask.」ではサビで一瞬オクターヴ上がる箇所で感情をわっと吐き出す部分があって、その感情の出し方の表現が難しいと思ってたのですが、今回はその表現が巧く表れてましたね(一方、2番ではオクターヴ上げず、諦めもしくは悟りにも似た心境の表現を試みており、この表現も良かったです)。これまでのライヴでこの曲が特に難しい曲だと思ってたのですが、実際に自身の声とギターに自信が生まれたからこそ、表現の多様化が可能になったのかな、と思ってます。見事でした。
彼の好調さは別の側面にも。前回披露の新曲2曲(「僕たちの鍵(仮)」、及びタイトル未定曲)に加え、今回初披露の「願い星」と、3曲も新曲を披露する充実ぶり。しかも個人的オススメのタイトル未定曲(実際ライヴで評判高かった様子。レコーディング切望です)と「願い星」は彼のこれまでのイメージを覆すに充分なくらいの明るめのナンバー。これが思った以上にしっくりはまっていて、心身がいい方向に向かってるんだな、と感じずにはいられません。ヴォーカルも先のギリギリ感とは一転、正直なところ明るめ且つミディアムテンポの曲でこれだけ表現が巧いとは思いませんでした。別イメージを魅せるのに充分な仕上がりで、これまでの彼のライヴでも屈指の出来、と感じました。
無論、今回も彼の強力なパートナー、古賀久士君の流麗なピアノが強力にサポートしていました。最早無くてはならない存在と言っていいでしょう。


③後藤冬樹
5/27から3日間で4本のライヴ!というスケジュール。流石に疲れてるのでは、なんてほんのちょっと思った自分…邪推でしたね。最後までエンジン全開、フルスロットル。むしろオーバーヒート寸前まで行ってました。本当に熱い! 自身の湯(今回は主催のいぶきがアーティストの紹介を温泉に例えて紹介)をいぶきに"サウナ"と例えられたこともあってか、全身の毛穴全開、ヴォルテージ上がりっぱなし、座りなし!最後まで突っ走ってくれました。
なんせ冒頭から「あの日のアイロニー」〜「MOVE」と怒涛のファンク攻勢ですよ。ジェットコースターでいうドドンパ的初回から最高潮の熱く滾る世界で圧倒し、新曲「エンドロール」「ヘイ」へ。まだ出来て間もない曲なのに、まるでクラシックの域に入るかというくらい後藤冬樹色を放っていました(それにしても冬樹さんのメロディは実に沁み込みやすく、すぐに覚えられるのです。強力なポップセンスの持ち主なんだと実感)。かと思えば即座の「My name is ポチ」で愛嬌いっぱいのところを披露する遊び心。ライヴのお客さんの名前を歌に入れてはしゃぐ姿はまるでギターのコードを初めて覚えてはしゃぐ子供のように純真そのもの。ちなみに曲の最後で見事に私をオチに使ってくれてイジワルさも覗かせてくれました(笑 本当に遊び心満点!なのですよ)
ラストに披露してくれたのが「LIFE」というのも驚きでした。この曲、自身のレコ発やワンマンといった時のみに披露するものと解釈していたのです。逆に言えば、いぶきという素晴らしい友人(であり好敵手でもある。素晴らしい関係)の主催ライヴで、一緒にステージに立てる喜びが冬樹さんにこの曲を歌わせる力を与えたのかもしれません。弦が切れながらも心を込めて言葉に、ギターに、ブルースハープに命を宿らせる姿は、ただひたすらに心を揺らされました。
サウナって全身の老廃物を排泄するのに有効でしたよね。沢山の汗(それも心の内の)を流させ、再生させるのに、冬樹さんの歌ほど強力なサウナはありません。


④いぶき
彼らの安定感はいったいどこから来るのでしょう。いつ聴いても決して乱れることのないハーモニー、彼らの阿吽の呼吸が生み出す絶妙すぎる音と音の間(前にも書きましたが、練習や実戦で培った賜物、でしょう)…それらに会場は時に身体を委ね、時に吸い込まれていきます。会場全体を彼ら色の"ゆったリラックス"感で包み込んでくれるいぶき。彼らが焚くお香のような…郷愁を抱かせてくれる感覚といえばいいのでしょうか。今回のライヴもその魅力が存分に発揮されていました。
新曲「ナガレ」を含む全7曲。曲間のMCの相変わらずの可笑しさも彼らならでは。「サン」は、これまでのいぶきの世界とはまた違う側面の詞とメロディ(自分にとってこれまでのいぶきにはない味わいだな、と。改めて歌詞の言葉を読んでみたいです)。聴いていくたびにいぶきらしい曲だなぁ、と実感。最近はライヴの流れも自然なものになっていて、「かぜ」〜「とびら」の流れや前述の「安息」での幕開け(こういうフェードイン的な曲での始まりがなんかいぶきらしいな、と)、そして締めの「コブシ」での高揚感いっぱいの盛り上がりがまた良かったです。
最後の「コブシ」が終わった後、自然発生的に起きた −そして観客おそらく全員が待ち望んでたであろう− アンコール! 本人達がいちばん驚いてた様子ですが、あれだけの凄いメンバーを率いて(しかも全組とも素晴らしいパフォーマンス! イベントが楽しいからこそ各aアーティストのボルテージが上がるのだな、と。いいイベントはアーティストの心をも動かす、と実感しました)、素晴らしいイベントを盛り上げてきたのだから、アンコールしたい衝動に駆られるのは当然なのかもしれません。お客さんからのリクエストで披露したのはライヴではひさびさの「衝動」…ひさびさながらも堂に入った歌で披露したいぶき、実に格好よかったです。


最後は観客全員に湯上りのドリンク(ヤクルトかヤクルトサイズのりんごジュース。細かな心配りが嬉しい)を振る舞い、乾杯して終了。まだまだ湯に浸かっていたい、そんな余韻が暫く残っていたライヴでした。当然の如く湯当たり…のぼせたのはいうまでもありません。