facethemusic (過去ログ)

20040421-20070301。音楽問題を中心に記載したはてなダイアリー、【facethemusic】の移行、その記録。

輸入規制、来年1月から始まる最悪の事態

昨日、公正取引委員会主催の懇談会が開かれました。『還流防止措置は、(日本)文化の国際競争力を高め、(海外との)交流を高めるために有効な手段であろうという考えが根底にあることだ』(以上、記事から抜粋) として法案改正を支持した日本レコード商業組合理事長の矢嶋靖夫氏と他の方の意見がぶつかっているというか、再販制度の崩壊(DVDとの抱き合わせは再販制度の対象外)・再販+還流防止措置の二重規制等、各代表や学識者が指摘する諸問題に対し、ことごとく(と考えるのが自然かもしれません)"反発"しているという矢嶋氏の姿勢が、(表現は悪いですが敢えて言うならば)あたかも聞く耳を持っていないかのような感じに見え、気持ち悪ささえ抱いてしまいます。記事から捉えた印象に過ぎないので、実際の会合がどのような空気だったかは定かではないのですが、矢嶋氏の反対意見が"反発"と記載されるあたり、どうもそのように受け止めざるを得ません。
気になった箇所を挙げてみます。

矢嶋氏は、加えて、内外価格差の目安として取り上げられることの多い、各国のAmazonにおけるCD価格データについても意見を述べた。
 「クリック数を拡大するため、赤字覚悟のビジネスを展開していたことがある企業だ。Amazonは、CDを利益をあげるための商材として使っていないと私たちは認識している」

(記事より一部抜粋) 矢嶋氏はこの発言の前に、「内外で価格差を設けることは)物価水準の異なる海外において、適正な価格で品物の提供をするために必要な手段」と述べていますが、Amazonのやり方は適正価格での提供ではなく、単なるクリック数拡大とでも思っているのでしょうか。Amazonの代表の方にきちんとAmazonのビジネスモデルを示してもらい、矢嶋氏の見解に異を唱えてほしいところです(自分は過去のAmazonのやり方をよくは知らないのですが)。それ以前に、「CDを利益をあげるための商材として使っていない」という断定は如何なものでしょう。少なくとも過去のモデルケースのみならず現在のAmazonもそうだ(文体が過去形になっていないため単純に思ったことですが)、と言っているように聞こえます。大袈裟かもしれませんが、Amazonの姿勢を根本から否定しているようにも見えます。

また、関根啓子氏(全国消費者団体連絡会消費者関連法担当)は、「既に“Not Importable Japan」と明記されたCDが登場しており、(輸入権の)施行前だといっても影響が出ていないわけではない」と発言。輸入権の目的や理念はとにかく、きちんと情報を収集する仕組みを早急に構築する必要があると訴えた。

(記事より一部抜粋) 関根氏の発言通り、既に日本への輸出禁止を(HP上で)明記したCDが登場してきています。そういったものを日本レコード協会はきちんと捉えているのでしょうか。
情報収集や運用において、一番気になったのは以下の箇所です。

、「実際の運用にあたって、税関がどのような動きをするかを早く決めなくてはいけないという意見には賛成だ」と、小売店団体として、実際の運用に危機感を感じている事を述べた。

(以上、記事より一部抜粋) 上記は日本レコード商業組合理事長の矢嶋氏の意見です。
少なくとも、5/7に日本レコード協会・5大メジャーと共に『日本の洋楽ファンの皆様へ』を連名にて発表したのは矢島氏が理事長を務める日本レコード商業組合のはずです。法案が成立し来年1月から施行という段階に来ての、『税関がどのような動きをするかを早く決めなくてはいけない』という発言は、法案の準備が全くもって出来ていないことを示し、法案を押し通した立場の人間が、法案運用に関わっていないかもしくは関わっても理解できていないという矢嶋氏自身の勝手且つ無責任さを自ら露呈したと言えるのではないでしょうか。

再度繰り返しますが、施行は来年1月1日から、つまり施行までもう4ヶ月を切っているのです。その間に数十万タイトルの処理の完了ができるとは到底思えません。HMVジャパン社長のポール・ゼデルスキー氏は懇談会の中で、

HMVジャパンでは、12万以上のタイトルを輸入しているが、税関ではどのようにチェックするか決まっていないと聞いている。付帯決議まで決まっているのに、実運用面での整備・準備が全くなされていない。これでは実質的な輸入規制になってしまう。細かな点が決まっていない状態で、施行日を迎えることには危険さを感じる」

(記事より一部抜粋) と発言していましたが、本当に危険過ぎるとしか言えません。結局法案準備が全く出来ずに蓋を開ければ完全規制という最悪の事態が容易に想像できてしまいます。
整備が全く出来ていないということは、だったら何故にあそこまで躍起になって問題だらけの法案を押し通したかという疑問にもなりますし(法案を通せばこっちのもの、とでも思っていたのなら言語道断です)、輸入CDの完全規制をするため今は法案整備をせず時が来て「整備が間に合わないから税関で全部輸入盤を止めて」となることを日本レコード協会やレコード会社等が待っているのか、という極端に穿った想像も否定できません。

●追記
造反有理にて、管理人のashramさんが今回の懇談会の概要を詳しく記載しています。

時間の都合で詳細や感想は割愛します。是非参照してください。

この懇談会は改正著作権法施行後、再び開催を予定しているということである。しかし、今回の議論を聞く限り、施行前に今一度今回の成果を踏まえたより具体的な検討を行う場を用意する必要があるのではないかと感じた。

(以上、一部抜粋) 懇談会の開催が来春では全くもって遅いでしょう。現段階できちんと法整備が出来ず、矢嶋氏をはじめ推進側の認識が低い状況では、施行すら危険です。