facethemusic (過去ログ)

20040421-20070301。音楽問題を中心に記載したはてなダイアリー、【facethemusic】の移行、その記録。

CD販売数の実質的な数値

音楽評論家の高橋健太郎氏のサイト、「MEMORY LAB」で、先日自分が書き起こした5/20のJAM THE WORLDの内容について書かれてます。ご覧頂き取り上げてくださった高橋氏へ、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
以下は一部抜粋です(一部加工してあります)。

5/20のJ-WAVE JAM THE WORLD
聞きおこしがアップされています。
しかし、ひどいね。冒頭からしてこれ。
「日本の音楽文化ってのは、非常に世界的にも最近受け入れられて、ま、爆発的にって言葉が当たるかどうかは知らないが、かなり、まあ、な勢いで伸びてるんですね」
2000年からの2年間だけで日本の音楽のアジアでの売り上げは570万枚から460万枚に下がり、20%も減じているというのに。
こういう嘘つくから、ユーザーを敵に回すのです。推進派も誰かに発言をさせる時には、もう少し人を選ばないと、逆効果だというのに気づかないのかな。

この数値を実質的に検証し、上記の推進派の発言の矛盾を指摘するのが、法案の改正に関わる文書に記載されています。

◎資料1
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第4回)議事要旨−資料4:レコード輸入権に関する関係者との協議の状況等について−資料4-1:アジア地域への原盤ライセンス契約の実態

高橋氏のおっしゃるとおり、合計数値を見れば明らかに数値の減少が分かります。
この数値の変遷をどのように解釈すれば、「爆発的、かなりの勢いで伸びている」と、判断することが出来るのでしょうか。推進派の方々の認識不足、の念を抱かずには入られません。

そして、他方からのCD売上の実態を示す資料がこちら。

◎資料2
「Confessions〜洋楽と時事ネタを中心とするmeantime分室〜」(by しんかいさん):2004年1月22日付『CDが売れなくなったと言うが(日本レコード協会のデータを分析してみたよ)』

洋楽、特にBillboardチャートに詳しく、「meantime」のホームページや同メールマガジンでも執筆されている(自分も拝見しています)、しんかい氏のブログより。
記事の内容に関して、asahi.comの資料はそのURL自体が未検出となっています(が、しんかい氏がきちんと抜粋し掲載しています)。
日本レコード協会は、2003年の音楽ソフトの生産実績について、音楽CDの生産・国内出荷額がいずれも減少している、とした上でこの原因を、

音楽DVD(デジタル多用途ディスク)の台頭や不正コピーCDの増加などが原因と協会はみている。

(一部抜粋)
と見ています。が、音楽DVD(等映像系音楽ソフト。こちらは大幅な伸び)を含めると、

これらを合わせた03年の音楽市場全体では、生産は同1%増の3億6057万枚、出荷額は同5%減の4561億7900万円だった。

(一部抜粋)
となるのです。音楽ソフト全体での売上はほぼ横ばいではないか、と分析するのが妥当と思われます。

そして更に資料を分析して、しんかい氏は以下のように結論付けています。
(以下は抜粋)

もっと細かく見てみると。
http://www.riaj.or.jp/data/monthly/2003/200312.htm
ここに昨年実績の細かい数字が並んでいるのだが、私が関心ある「洋楽」に限ると、売上枚数で昨年比98%、売上額で97%。まあ、ほぼ昨年並と言っていい範囲だろう。ということは足を引っ張っているのは邦楽のほう。それでも枚数では昨年比95%といくらかマシで、売上額が88%と落ち込みが大きい。

ふと横を見ると「新譜数・カタログ数」「デビュー歌手数」なんてリンクがある。で、これを見ると歴然。
http://www.riaj.or.jp/data/others/n_catalog/arec_n2.html
http://www.riaj.or.jp/data/others/debut.html

CDアルバムの新作発売タイトル数。1996年の16,385タイトルから徐々に減少して、1999年15,208から2000年に12,573と激減。その後も更に減少を続け、2002年は11,152タイトル。全盛期の68%、ざっくり言って3分の2である。ついでにデビュー歌手数というのを見てみると、これも1993年の417からだんだん減って2002年には199。半分以下だ。

つまりは、レコード会社が新人を発掘し、売り出す努力をしなくなり、発売するアイテム数を減らして“売れるものだけを売る”方針でボロい商売をしようと狙った結果、売上が落ちてきたという当たり前の結果が、ここに並べられたデータが物語っているのだ。これは俗に自業自得と言う。

再販制度の枠に守られながらCDの売上減少(音楽ソフト全体としては横ばい、と言える)を、「不正コピー」や「還流盤の台頭(実際は台頭しうるほどの数値ではない)」の責任とし、輸入盤全体を禁止できる輸入権まで獲得しようとしているレコード会社の怠慢が手に取るように分かります。
その「怠慢」で思い出したのが、日本テレビが月曜22時台に枠移動した「スーパーテレビ・情報最前線」の枠移動初回、『浜崎あゆみ…光と影〜25歳の絶望と決断』(4月12日放送分)においての、彼女初のベスト盤発売の経緯。
この内容については、logic systemさんで記載されています。
(以下抜粋。一部加工してあります)

番組を見ていて気になったこと。浜崎あゆみが心を閉ざし、割り切るきっかけとなった事件として、念願だったベストアルバム『A BEST』の発売が、自分の意思とは違い、事務所の一方的な決定によって強行された、というくだりがあった。過去に、スピッツのベストアルバム『RECYCLE』がリリースされた時に、本人達がホームページで「ベストアルバムを出すというほどかっこ悪いことは無くて、出すとしたら解散の時だと思っていたのに、事務所に強行されました」という趣旨のメッセージが出されたことがある。また、JUDY AND MARYの『FRESH』に関しても、解散直前に発売された「JAM BOOK 2001」においてTAKUYAが「絶対に聴かないと思う。いまだに聴いてない」などと発言している。(余談だが、当時ファンでありながら、自分はこのアルバムの内容を見て全く購買意識が起きなかったのをはっきりと記憶している)

ベストアルバムと言うのは、そのアーティストを知らない、いわゆる一般購買層に対して効果が高い。ただ、その選曲やコンセプトなどについてちゃんと考慮すると言う、アルバム制作にといて当然の行程が省略されて、「とにかく出しとけ」と言う感覚で出される場合も多い。それだけに、アーティストやそのファンにとって、ベストアルバムは「作品」として認識されない場合が多いと思う。浜崎あゆみはこれに対して、一部の曲の再レコーディングの強行、さらにリリース時期にあわせて、主要雑誌40誌の表紙を飾ることで、これを一つの抵抗とした、と番組で紹介されている。自分はこれを、「単なる一商品でしかなくなってしまったベストアルバムに、どうにかして自分の意思を吹き込もうとした」と解釈した。そう考えると、今まで自分が持っていた浜崎あゆみに対する偏見が少しは拭えた気がする。これを「番組に踊らされている」と捉えるならそれまでだが。

自分はこの番組をちゃんと観ていなかったので、「事務所」がイコール所属レコード会社なのかを判別できません(ただニュアンスとしてそうだった、と曖昧ながら記憶しています)。しかし、彼女がその一方的な通告を受けてからの抵抗については時間が割かれて紹介されている上、その一連の経緯を彼女本人が話してくれていたのです。
レコード会社にとって、過去の音源の再利用ほどオイシイものはない、と自分は考えています。音源の制作費は極端に言えばゼロであり、またリリース期が決算月(多くは3月)に出されることも多い(もしくはDREAMS COME TRUE最初のシングルベストのようにレーベルの移動に関して、移籍前のレーベルから、ということも。私見ですが最初のベスト盤はあまりに装丁が酷かったことを覚えています)ので、ベスト盤ほどレコード会社にとっていいネタはないんでしょう。それが、音楽に全てをつぎ込んで制作したアーティストサイドの意思を簡単に踏み潰してしまう、ということ。確かにそのアーティストのライトユーザーには、ベスト盤が導入口としての格好の存在であると思いますが、ベスト盤の製作過程がレコード会社のまさに怠慢な、レコード会社の利益の為だけの一方的な通告、によって作られたのであれば、そのやり口には閉口してしまいます。
それと、これも私見ですが、日本は諸外国以上に、通常のオリジナルアルバムの評価がされにくい、と思うのです。コンセプチュアルなのか1曲1曲の純粋に良い曲の集まりなのかということは別にして、それを例えば☆が何個、とかで示したりすることはあまり多くありません。言い換えれば、素晴らしいアルバムは絶賛されて然るべきだし、駄作ならばきちんと(単に非難ではなく)評価理由を書き、そのアーティストに客観的な視点で見据える視点が足りないと思います。自分自身は、邦楽CDの販売が減少している理由は不正コピーではなく(対象アーティストの)ライトユーザー購入離れだと考えています。アーティスト自身のファンならほぼ迷わず発売日等に購入するもので、そうでなければ吟味してひたすら迷います。その迷いを少しでも晴らせ背中を押してあげるのが評価だと思うのですが、どうもレヴューを見るとシングル曲とかどうのということが多いのと、あまり芳しくない作品でも悪い箇所を指摘する声が挙がっていません。もしかしたら邦楽には「悪い評価を下すな」との圧力がかかっているのか、と勘繰ってしまいます。昔からそうだったと言われればそれまでだし、自分自身の情報源が少ない、と言われたらそれまでですが。