facethemusic (過去ログ)

20040421-20070301。音楽問題を中心に記載したはてなダイアリー、【facethemusic】の移行、その記録。

J-WAVE "JAM THE WORLD" 15minutes より

DATE:2004/05/06(木)
NAVIGATOR:高瀬毅
REPORTER:内田佐知子
GUEST:高橋健太郎(音楽評論家)
(以上敬称略)


21:07 start

♪BGM:"アシンメトリー"スガシカオ

<高瀬>
J-WAVE JAM THE WORLD、続きましては"15minutes"のコーナーです。
リポーターは内田佐知子さんです。こんばんは。
<内田>
こんばんは。よろしくお願いします。
<高瀬>
よろしくお願いします。
<内田>
今流れているのはスガシカオさんのアルバム「SMILE」から"アシンメトリー"という曲なんですが。実はこれ、台湾からの逆輸入盤のCDなんです。ジャケットをご覧戴きますと、ここにあるんですがタイトルが「SMILE」ではなくて、「微笑」となっております。
<高瀬>
漢字を当ててるんだね?
<内田>
はいそうなんですね。そしてスガさんの名前は、横須賀の「須賀」という漢字が当てられています(笑)
<高瀬>
(笑)スガさん怒るんじゃないかと思うんだけど。
<内田>
ご本人はどう思われるんでしょうか?
<高瀬>
何だこれ、と。知ってるんでしょうかねスガさんね。ちょっと聞いてみたいんですけど。*1
<内田>
そうですね
<高瀬>
これはあれですか?いわゆるコピー商品とか海賊版とかっていわれるものなんですか?
<内田>
これはそうではなくてですね、逆輸入盤と言うんですね。高瀬さんは逆輸入盤のCDは買ったことはありますか?
<高瀬>
僕は割と日本盤で普通に買ってますけどね。
<内田>
あ、そうなんですか。
<高瀬>
いくらぐらいするんですかこれ?
<内田>
これはですね、夜遅くまでやってる有名な某ディスカウントショップで買ったんですけども、税込みで2079円。日本でリリースされた「SMILE」はですね、税込3059円なので、およそ1000円も安いんです。
<高瀬>
あ、これ大きいですね。
<内田>
はい。そしてみなさんもご存知の通り、今日本のアーティストのCDがアジアなどでかなり安く売られていて、それを日本に逆輸入してこうして買うことが出来るんですね。
<高瀬>
それはとってもいいことですよね、でも消費者にとってはね。ありがたいこと。
<内田>
そうですね、1000円も安く。はい。そして実は今こうした邦楽CDの日本への逆流を防ぐ為に、音楽CDの逆輸入禁止を盛り込んだ著作権法改正案が国会に提出されているんです。
<高瀬>
うーん。今ね、そのCDが売れないというね、本当にどんどんどんどん売上減っているようなんですけど。まあ音楽業界厳しいのでね、その辺本当に安いのが入ってくると益々売れなくなるというのは、
これは理の当然ですから。規制するというのは分かるような気もするんですけどね。
<内田>
はい。そして確かにですね、まあそう考えると、まあ逆輸入禁止はいいことのようではあるんですが、ところがこの著作権法改正案を巡って、反対する意見が高まっているんです。実際一昨日新宿のロフトプラスワンで、この著作権法改正案の実態を知ろうというシンポジウムが開かれて、入場できない人も出るほどの大盛況だったんです。
そこで今夜はそのシンポジウムの発起人の一人である、音楽評論家の高橋健太郎さんをゲストにお迎えして、今回の著作権法改正で音楽CDの世界がどう変わるのか、いろいろとお話を伺っていきたいと思います。高橋さん、よろしくお願いします。
<高橋>
こんばんは。高橋です。よろしくお願いします。
<高瀬><内田>
よろしくお願いします。
<内田>
はい、早速なんですが、今国会で議論されている著作権法の改正案、これどういう内容なのか教えていただけますか?
<高橋>
そうですね。まあ、著作権法の改正案自体は、いろんな問題を盛り込んでいるんで、全部説明しようとすると大変なんですけれども。今僕達が、音楽ファンが、一番この著作権法改正案が通ったらどうなってしまうだろう、と思っていることは、輸入盤、それも今お話にあったアジアからの逆輸入盤、僕ら還流盤とか呼んだりするんですけど、それが禁止されるだけじゃなくって、僕達が普通に、まあ今タワーレコードであれHMVであれ今いろんな多くのショップで買ってるような洋楽の輸入盤も買えなくなってくる、あるいは買いにくくなってくる、値段が高くなってくるんじゃないか、という懸念があるからなんです。
<内田>
それはちょっと困りますよね。
<高瀬>
困りますよね。今回の改正案の目的というのは、いわゆる著作権の保護といわゆる還流盤、を防ごうじゃないか、ということなんですが、実際はどのくらいの数のCDが…
<高橋>
68万枚位だった、という
<内田>
それはマーケット的にいうとどのくらいなんでしょう。
<高橋>
本当に微々たるもんですね。ちなみに洋楽の輸入盤がどのくらいかっていうと、6000万枚位らしいですね。
<内田>
それを考えると68万枚というのはやはり…
<高瀬>
それほどたいしたことない。
<高橋>
実際に大手のレコードショップで売ってませんから。本当にディスカウントショップの奥の方行くと、あった。みたいな。
<内田>
なるほどね。でもこの改正案が通った場合ですね、洋楽の輸入盤にどういう影響が具体的に出てくるんでしょうか。
<高橋>
最初この法律が起草された段階では、アジア盤の還流を制限する為の法律だ、っていうふうに説明されてたんですね。
<内田>
元々は、ですね。
<高橋>
はい。とことがこの法律も、先頃参議院を通過してしまって、衆議院で5月の末に更に審議される状況まで来ているんですけれども、どうも参議院での説明を聞いていたら、洋楽の輸入盤も同じようにこの法律が適用されて。洋楽っていうのは、アメリカののレコードでしたらアメリカに親会社があって、それから日本のレコード会社がライセンス契約というのを結んで音源を供給されますよね。その親会社の方が、これは輸入禁止である、という通達をしたら、輸入禁止に出来る、という法律なんです。
<高瀬>
これは本来ね、そのアジアに出したものが還流してくる物の逆輸入盤と、アメリカやヨーロッパから入ってくる、これは本来は別個の話なんでしょ?
<高橋>
本来は別個の話として説明されていたんですね。ところが、法律の上で日本のアーティストだから、アメリカのアーティストだから、そこで区別をすることはできない、という話になっていたんです。
<高瀬>
いつの間にか?
<内田>
いつの間に?
<高瀬>
審議を聞いていたらそういう風になっていた、と。
<高橋>
ええ。審議の中で明らかになってきました。
<高瀬>
ほぉ。
<内田>
でも、そうなると輸入盤のCDがCDショップから消えてしまったり、ということをやっぱり私達は考えてしまいますから。
<高瀬>
そうですよね。これ、どういうようなCD…じゃあ全てのCDが規制される…?
<高橋>
そうですね。
<高瀬>
輸入の?
<高橋>
ええとですね、日本盤が出ている洋楽ってありますよね。で、これに関して、もし親会社の方が輸入盤の方を止めたいとか思ったら、「輸入禁止です」と通達すれば止まるわけですから、そしたら今までは国内盤・輸入盤、僕らレコード屋に行くとどちらかを選べたんですけど、選べなくなりますよね、国内盤しかないから。で、国内盤が出てない輸入盤、ですね。これは今まで通り買えるんじゃないか、とは思うんですけども、ただそこのところがものすごく、「これは輸入していい」「これは輸入してはダメ」、という判断基準が、とても不明確なんですね。で、例えば文化庁がどのように説明しているかというと、将来日本で国内発売される可能性があるものも規制の対象になる、と言っているんですね。だから、まだ発売してなくても「3ヵ月後位に発売するかももしれないからこれは輸入禁止だよ」と言えば入ってこないわけです。国内盤出るまで。
<内田>
その判断を決める人というのは、素朴な疑問で申し訳ないんですけれども、誰なんですか?
<高橋>
それは親会社というか、ライセンスの権利を日本のレコード会社に与える外国のレコード会社ですね。
<内田>
そうですかぁ。
<高橋>
あと、とっても僕なんかが、これはちょっとどうなんだろう…大変なことになる、と思っているのは、CDもアナログレコードも同じように考える、と。だから、日本盤で国内盤のCDが出てる同じ音源のアナログレコードも、やっぱり規制の対象になるんですよ。
<内田>
それはちょっとクラブのDJとか、凄く困りますよね。
<高橋>
困りますね。だから実際それを、税関で役人が「これは入れてはいいです」「これは入れてはいけません、没収です」というようなことをやるわけで。例えばA面が有名な曲、でもB面にリミックスが入ってる。で、「これ違うんですよリミックスが入ってるんですからこのアナログは」って言っても、その時税関の人が分かってくれるわけないですよね。
<内田>
分かってくれなさそうですね。
<高瀬>
インターネットで買ったりとか個人輸入とかってそういうものも…?
<高橋>
個人輸入がどうなるかってのは、まだ、実際、どのくらい厳しく運用されるか、今僕らに分からないんですね。推測でしか。ただ厳しく運用すれば、個人輸入も止められる可能性がありますね。
<高瀬>
ほぉ。
<内田>
ということは私達が海外に行って買ってきても、それが没収される場合もあるんですね。
<高橋>
日本での販売を目的に持ち込んだら、それはいけないことですから。だから同じものを2枚持ってたりとか。
<高瀬>
例えば友達にも持っていく、と。で自分も1枚欲しいと。で2枚買うことはありますよね。
<高橋>
ええ、でもそれは「これは売るためじゃないですか」とか。僕なんか海外行くと50枚とか100枚とか、スーツケースをパンパンにしてきますので。
<高瀬>
それはね、音楽評論家ですからね。
<高橋>
でも、「こんなに個人で使うんですか」「売るためじゃないですか」とか言われたら没収される可能性はありますね。
<高瀬>
何か凄い法律だねこうなってくると。
<内田>
そうですよね。でも、それから、これとはちょっと別になるんですが、ここ数年台湾などでコピーCDですとかDVDが販売されていることが問題になってましたけれども、こちらは今どうなっているんですか。
<高橋>
そういう話をする時に、凄く、こう、普通の人が海賊盤というのを頭に浮かべると思うんですよ。で、これ国会を、すんなり参議院を通っちゃったのを、なんとなく、そのアジアからアジア盤、というと海賊版だと思っているんですよ。
<高瀬>
あ、無許可で流そう、ってね。
<高橋>
でもっと、500円とか1000円とかで安く売っているような。でも今、ここで問題になってるのは、海賊盤ではなくて全部正規のルートで向こうに行ったもの、と。あるいはこっちに帰って来るもの。
<高瀬>
そうですよね。
<内田>
でその海賊盤と逆輸入盤を比べると、どちらの被害が大きいのでしょうね。
<高橋>
海賊盤ってほとんど売ってないじゃないですか。
<内田>
あまり見ないですね。確かに本当に。
<高橋>
日本は海賊盤に関しては、かなり買う側も店もみんなモラル持ってるから、海賊盤ってそれほどの問題にもう既にならない、国になってますよね。
<高瀬>
これ、だけどあれですよね。話聞いてると非常に大変なことが起こりそうな話なんですけど、でも国内のCDが売上を減少している以上、レコード会社としてもこれはやっぱり何らかの方策を立てたいというのは、これは分かるような気もするんですよね。そこら辺はどうなんですか。
<高橋>
ですけれども、これをじゃあレコード会社の中で、あるいは音楽ファン、例えば僕のように音楽雑誌なり、ラジオに関わっている方々であり、そういう人たちにどのくらい相談して、これを、法案を考えているのかというと、ほとんど誰も知らないですよね。音楽の世界にいても、まだ。
<高瀬>
このことを?
<高橋>
ええ。
<高瀬>
ものすごい重要な感じはしますけども。
<高橋>
で、レコード会社の現場のA&Rとかでしたら、こうなったら、例えば輸入盤である程度盛り上がりを作ってそれから国内盤を出すとか、いろんな考え方があると思うんですけれども、そういうことには、とっても、上の方だけで、あるいは文化庁という、国の機関の中だけで考えて、荒っぽくやってしまおうということなんで、本当にレコード会社にこれで利益が出るの?ということをいろんな人に聞いた場合、僕自身も疑問に思いますし、実際自分でメジャーではないインディのレコード会社をやっている人やってる人、あるいは大手のレコード店に勤務している人、そういう人に聞いても、こんなことしたらよけい音楽ファンは離れていく、うん。
<高瀬>
はぁ。
<内田>
どんどん、だってカタログが狭まってしまいますもんね。
<高橋>
そうですよね。
<内田>
そうですかぁ。なんだか、ちょっと暗くなってしまうような、ね。本当に。
<高瀬>
そういう話になってきますよね、これは。うん。
<内田>
問題ですけども。はい。
さて、この著作権法改正問題なんですが、海外では一体どうなっているのでしょうか。またこの改正案は、アーティストや消費者にメリットがあるのでしょうか。ここで一曲聴いていただいて、後半はその辺りについて更に詳しく伺っていきたいと思います。


♪SONG:"YOU DON'T KNOW MY NAME(REGGAE REMIX)"Alicia Keys*2


<内田>
81.3 J-WAVE "JAM THE WORLD" 15minutes
今夜は音楽評論家の高橋健太郎さんをスタジオにお迎えして、今国会で議論されている、著作権法改正と輸入CDの規制について考えています。高橋さん、引き続きよろしくお願いします。
<高橋>
はい。
<内田>
はい、そして今かかっているようなリミックス盤というのも、今後かからない可能性が出てくるかもしれない、ということですよね。
<高橋>
かもしれないですね。
<内田>
えぇ。ということで、今回の著作権改正案の中に盛り込まれる、レコード会社に輸入の許諾権を与えるレコードの輸入権ですけれども、この輸入権というのは海外ではどうなっているのでしょうか。
<高橋>
海外でも設けてる国はありますね。
<内田>
例えばどんな国があるんですか。
<高橋>
EUなんかでもかなりの国が設けてたりしますけれど。ただまあ、EUの中ってのは今凄くその、自由に物品が流通しますから、それほど大きな効力はないんじゃないか、というところもあると思います。あと、ただ、凄く心配される話も聞くことがあって、香港ではやはり輸入権に関する法律が出来たんですけども、で、これでどうなったかというと、さっき税関で止められるかもしれない、という話がありましたけど、例えばあるアーティスト、メジャーで大人気のアーティストのアルバムが、「基本的にはこれはNOである」、ということで止められますよね。で、ところがそのアーティスト、最初の3枚はインディ盤だった。とするとこの3枚はインディ盤で、別に輸入禁止って元のレコード会社も言ってないので入れていいだろう、と思って入れようとすると、税関は「いや、このアーティストはダメだ」、と。
<内田>
とりあえずみんな同じだから。
<高橋>
全部。で、いちいち、例えば税関の人が、「いやこれは○○レーベルで、これはOK」とか、「これは大手のマークが付いてるからダメだ」とか、輸入禁止って書いてあって規制するんだったら一目見て分かりますけど、通達みたいなことで禁止するんだったら、区別なんか出来ませんよね。
<高瀬>
あ、そっかぁ。
<内田>
そうですねぇ。
<高橋>
で、すごくやっぱりそういうことを荒っぽくやってしまうんで、入って来なくなってしまう。入れていいはずの輸入盤までが。
<内田>
はぁ。でもそういうガイドラインは、なんか、どうせだったらちゃんとやってほしいですよね。
<高橋>
で、まあ日本で同じようになるかどうかは分からないですけども、ただ、税関がその用件を判断するってことになったら、どっかでやっぱりそういうことが起きて来そうですよね。
<内田>
うん、そうですねぇ。あとそれからですね、日本では国内盤の音楽CDに対して、どこの小売店でも同じ価格で売らないといけないという、つまり輸入盤のように勝手にディスカウントして売ってはいけないという再販制度というものがありますよね。で、これと今回の輸入権というのは、何か関係はあるんでしょうか。
<高橋>
再販制度というのは他の国にはない制度で、これのおかげで日本はレコードとか本が、どこの店に行っても定価で売っている、というようなことがあると思うんですけれども。で、輸入権というのも、やはり再販制度と同じように、輸入盤が安い輸入盤を抑えることによって、高い国内盤しか買えない状況を作り出すことが出来ますから、だから同じように今の価格を維持する、あまり競争しなくていい、というそういう状況を作り出すまあレコード会社の保護になると思いますね。でこの再販制度輸入権と、両方で保護するのは余りじゃないか、消費者の方に不利益が大きすぎるんじゃないか、という声は凄くあると思いますね。
<内田>
そうですかぁ。でもこの再販制度という自体、これまた難しい問題ですよね。
<高橋>
そうそう、とっても難しいですね。で、まあ公正取引委員会なんかは昔からちょっと問題にしてたりもするんですけど、ただ再販制度というのは僕個人としては、この再販制度のおかげで、日本ってこんなにいろんなレコードが国内盤で出て、それこそブラジルの音楽とか、アイルランドの音楽とか、いろんなもの出ますよね。でそんなに沢山売れないものでも、再販制度のおかげで価格はある程度高く、高い価格で、なおかつお店としては返品が可能なようなシステムで、売れなかったら仕入れることが出来たりするんで、それでいろんな音楽がこれほど聴ける国である、という側面もあると思うんですよ。だから、そういう意味では再販制度輸入権というのは、輸入権というのは今度は値段も高く保てますけど、カタログを減らすことになるんですね。
<内田>
選ばれたものだけが売られるわけですからね。
<高橋>
ええ。だから、今みたいに本当に日本がこんなにいろんな音楽を聴ける、いろんなタイプの音楽ファンがいて、でこういう国の面白さってなくなっちゃうと思うんですよね。
<内田>
うーん、そりゃちょっと淋しいですよね。
<高瀬>
そう、深刻なことになってくると思うんですけどね。こう長い目で見たらね。そもそもなぜ今法律を改正しようとしてるんですか。
<高橋>
1つには、やはり日本だけじゃなく世界的にレコード産業が非常に苦境にある。これは事実で、で、これに対して何かを考えていかなきゃいけない時期にあるというのは確かだと思いますね。
<内田>
そうですか。で、あの、実際ですね、この法案が通ることで、消費者としては安い輸入盤のCDが買えなくなるので、本当にいろんなデメリットが懸念されているわけですけれども。一方、アーティスト側というかですね、アーティストにとってはこれ、どうなんでしょうね?
<高橋>
えっとこれは日本のアーティストですか。海外…
<内田>
日本のアーティストですね。とりあえずはまず。
<高橋>
日本のアーティストは、まあ還流盤に関しては、まあ還流盤に食われている、まあ今は微々たる量ですけども、分がなくなるっていうのはちょっとメリットあるかもしれませんね。ただ、さっきも言ったように、還流盤って海賊版じゃないですから、ちゃんとアーティストに著作権印税は入るんです。一度台湾盤なら台湾を通じて。
で、基本的には洋楽、今輸入盤の話をすると、日本のアーティストにとっては基本的には直接関係ないと思うんですけども。ただ日本の音楽文化って、やっぱりいろんなの国の音楽がこれだけ聴ける、こういう状況の中で、特にこの10年、20年の日本の音楽って、そういう、世界でも此処にしかないこういう環境の中で作られている、と思うんですよ。だから、これがね、凄い限られた音楽しか聴けないような、本当にメガヒットだけ、みたいな、ラジオ聴くにしても流れてくるものにしても、そういう中でアーティストがやっていくというのは面白いだろうか…
<高瀬>
つまんないですよねそれ。アーティストもつまんないし、こっちだって面白くないなぁっていう感じですよね。ただ今回こういう問題が出てきたのって、やっぱりその日本のCD高いんじゃないかってね、逆輸入盤が結局入ってくるというのは日本のCDが高いですよね。でそれで安い方をやっぱ買いたい、これ分かるんですよ。なぜ日本のCDはこんなに高い?さっき再販制度もちょっと出ましたけど…
<高橋>
再販制度もありますしね…まあちょっとね、なぜ高いというのは、あの…簡単には言えないと思うんですよ。
<高瀬>
もっと安くならないのか、って逆に言うとね。ならない?…
<高橋>
企業努力が足りないとか、ね。いろんなことが考えられるとは思いますけど。あの、それでちょっとさっき言い忘れたんですけれども、なぜね、この洋楽輸入盤も規制しようとしてるか、という話がありましたよね。あの、「規制はしません」、というような話もあるんですよ。5大メジャーって言う、世界的に、ソニー・BMG・ユニヴァーサル・ワーナー・EMIグループのレコード会社は、この法律ができても日本に対して輸入盤規制を、禁止の通達はしないっていうようなことも言っているんですけれども。その一方で、全米レコード協会が、実はこの法律を、草案を作っている段階で、文化庁に対して文書を送っていて、で、その文書には、アジア盤の還流だけに限らず、広く並行輸入を規制する法律を作りなさい、というような、ある種の外圧みたいなものをかけてきていたんじゃないか、という話が今浮上しているんですよね。
<高瀬>
非常に、何かそのワールドワイドな話になって来る感じはしますよねこれね。
<高橋>
で、さらに今度の7月から、日米租税条約というのが、これはもう国会を通った法律なんですけれども、発行しまして、で租税条約が発効するとどういうことになるのかというと、外資系のレコード会社、アメリカのの資本が50%を超えたレコード会社、のライセンス印税、日本では源泉税とかかからなくなるんですよ。だからすごくライセンスビジネスというものが、有利になるんですね。で、輸入盤をアメリカのレコード会社が輸出して、日本に。それで入ってくる利益と、日本盤のライセンスさせた国内盤が1枚売れた時の利益を考え合わせると、国内盤の方が多分1枚売れた時の利益は高いですね。今の国内盤の値段だったら。
<内田>
うーん。その為に日本のCDが高く保たれてるということはないですよね別に。
<高橋>
日本のCDが高く保たれてるのは、まあその流通の問題だったり製造経費の問題だったり、いろんなことがあると思うんで、簡単には僕にも答えられないですね。
<内田>
一概には…
<高瀬>
これまた別個の話になってくるかもしれませんね。ある種。
<内田>
ちなみにこの改正案は通りそうなんですか?
<高橋>
通る可能性が、高いとは思います。
<内田>
どのくらいだと思いますか?
<高橋>
もう参議院は通過してしまっていますから、衆議院であと、まあ2〜3週間で審議、採決というようなところへ進むと思いますけども。まあ、この問題を音楽ファンもミュージシャンも、あるいはそのいろんな音楽関係者も、それほど良く知らないと思うんですね。
<高瀬>
後手に回っちゃったんですか?なんか。
<高橋>
ええ、知らない間にもうこんなところまで来てたんです。
<高瀬>
ええっ!?ちょっとこれは問題がありますね。大有りですね。聞いてるとね。
<内田>
そうですよね。
<高橋>
だからこのまま音楽ファンの声、が何も高まらなかったら、通ると思いますね。
<内田>
ええっ… そんな…
<高瀬>
でも時間的にはそうないですよね、もう。
<高橋>
ないです。
<内田>
もう追い詰められてるような…
<高橋>
もう通ったら来年の1月1日からこれが施行されますので。
<内田>
1月から、じゃあ邦楽のCDの逆輸入盤というのは、もう禁止、と。とりあえず。
<高橋>
もう完全に止まるでしょうね。1月から。
<内田>
輸入盤に関してはどうですか?
<高橋>
輸入盤に関しては、これはまあどうなるかっていうのは、憶測でしか言えないんですけども、僕はすぐに、タワーレコードや大きいHMVなんかから輸入盤が全部消えるとは思わないんですよ。ただ、少しずつ、「あれ、このタイトル、アメリカ盤ほしいのに入ってこないなあ」とか「あれ、これ、もう向こうで出てるのになんで入ってこないのかなぁ」とか少しずつ少しずつそういう例が増えていくと思いますね。
<高瀬>
ほうほうほうほう。
<内田>
はぁ、そうですか。
最後にですね、高橋さんにお伺いしたいんですが、あの、今回の改正案ですけれども、現在厳しい状態にある、その日本の音楽業界にとって、これはプラスになると思いますか?
<高橋>
全く思いません。
<内田>
もう、これは100%と思った方がいいですか。
<高橋>
100%思いません。
<内田>
はぁ… 逆にどういう影響…?
<高橋>
まず音楽ファンの音楽離れが更に進んでしまうでしょうね。
<内田>
それは値段の理由ですかね?
<高橋>
値段もありますし、さっき言ったように、日本の音楽ファンっていろんな音楽を聴くのが好きなんですよ。
<内田>
そうですよね、本当に。
<高橋>
で、いろんな音楽が聴けなくなる国にいても、つまらないじゃないですか。だったら音楽より他の事を趣味でしよう、と。
<高瀬>
はぁはぁはぁはぁ。
<内田>
それはちょっと、ねぇ。他にはどんなことがありますかね。
<高橋>
あの、さっき言ったようにアナログ盤が買えなくなるっていったら、クラブカルチャーなんて、死にますよね。
<内田>
あぁ、そうですよね。そうですよね。
<高橋>
DJが新しいアナログ盤をいち早くかけるところがクラブっていうところの面白さなんだから。
<内田>
えぇ、そうですか。ということでもっといろいろみんなでこう意見を交換していきたいところですね…
<高瀬>
本当はもっと早くこの話に気がついて、世論が沸きあがってこなければいけなかったという感じがしましたね、今回は。聞いてて。
<高橋>
そうですね。
<内田>
そうですね。はい…
ということでお時間になってしまいましたけれどもね、高橋さん、今日はお忙しいところありがとうございました。
<高橋>
どうもありがとうございました。
<高瀬>
ありがとうございました。

いやあ、今何か話聞いててね、これやっぱ、何もいいところがないってね、先程断定されましたけど、僕もこの話聞いてそんな感じしましたよね。で、日本人の良さって言うのは、その、音楽に限りませんけどね、例えば食べ物にしても、いろいろな文化にしても、諸外国からいろんなものを集めてですね、それを吸収していくわけですよね。そっから何かを作っていくという、多様性だと思うんですけど、その文化のひとつの要素である音楽がこんな風に先細っていくんじゃないかっていうのは、僕は非常にやっぱり日本人にとって長い目で見たときに凄い深刻な影響が出てくるんじゃないかな、って感じがしましたね。なんとかこれ、まだ時間もうちょっとあるから、この法案を少しとにかく先延ばしで採決を先延ばすとか、なんかそんなことでも考えないとね、音楽ファン沢山聴いてると思いますけど、声を上げていく必要あるんじゃないでしょうかね。
<内田>
なんとかしたいところですけれどもね。
<高瀬>
そんな感じしましたね。どうも内田さん、お疲れ様でした。
<内田>
ありがとうございました。
<高瀬>
今日は音楽評論家の高橋健太郎さんをスタジオにお迎えしまして、今国会で議論されている著作権法改正と輸入CDの規制について、考えました。


21:36end


〜番組終了直前の約5分間、リスナーからの上記の意見紹介。99%以上が反対。またナヴィゲーターの高瀬氏も反対を強く表明。〜

*1:同日22時よりスガシカオの番組の為J-WAVE内にはいたはすです

*2:実はこの曲の輸入盤シングルも、HMVでの存在を確認していますがAmazonでは未だに取り扱われていません…